解体工事の標準工程フロー|法定届出と工期の組み方
解体工事の工程表は、実際の取り壊し日数よりも「着工前にどれだけ手続きを積み残さないか」で成否が決まります。ここでは事前調査から整地・完了報告までの標準フローを追いながら、建設リサイクル法の届出や石綿の事前調査など期限が決まっている法定手続きを工程表のどこに置くべきか、木造・RC造それぞれの工期の目安とあわせて整理します。
1. 解体工事の全体像は「準備6:作業4」で考える
解体は重機が入る期間だけを見れば短い工事ですが、工程表上は準備期間のほうが長くなるのが普通です。木造30坪程度なら実作業は1〜2週間でも、事前調査・各種届出・近隣挨拶・ライフラインの停止手続きに3〜4週間かかることは珍しくありません。届出には後述のとおり「着工の7日前まで」といった法定の期限があり、ここを詰めすぎると重機とダンプの手配を押さえたまま着工できない事態になります。工程表を引くときは、まず解体開始日を仮置きし、そこから逆算して届出・停止手続きを配置してください。
2. ① 事前調査(石綿・埋設物・近隣状況)
最初に行うのが現地調査です。建物の構造・階数・延床面積、重機とダンプの進入経路、隣家との離隔、電線や埋設配管の位置を確認します。とくに石綿(アスベスト)の事前調査は、2021年4月の石綿障害予防規則等の改正により建築物の解体・改修工事すべてで義務となりました。2023年10月以降は「建築物石綿含有建材調査者」等の資格を持つ者が調査を行う必要があり、外注する場合は調査会社の日程確保が工程のボトルネックになります。調査結果は3年間の保存と現場への掲示が求められる点も押さえておきます。
3. ② 法定届出(期限が工程を縛る)
解体工事で工程を左右する届出は主に3つです。床面積の合計80㎡以上の建築物の解体は、建設リサイクル法に基づき着工の7日前までに都道府県知事へ分別解体等の計画を届け出ます(届出義務者は発注者)。石綿の事前調査結果は、解体部分の床面積80㎡以上などの規模要件に該当する場合、労働基準監督署と自治体へ電子システムで報告します。さらに、ブレーカーや解体用機械を使う作業は騒音規制法・振動規制法の特定建設作業に当たり、作業開始日の7日前までに市町村長へ届け出ます。いずれも「7日前」が共通の目安と覚えておくと工程表に落としやすくなります。

4. ③ ライフラインの停止と近隣挨拶
電気・ガス・水道・電話・インターネットの停止と引込線の撤去は、事業者への連絡から実際の作業まで1〜2週間かかることがあります。とくに電力の引込線撤去は電力会社の工事日程に依存するため、解体着手日が決まった時点ですぐ手配してください。なお散水用に水道だけは残し、解体完了後に閉栓するのが一般的です。近隣挨拶は着工の1週間前を目安に、工事期間・作業時間帯・元請と現場責任者の連絡先を記した書面を持って回ります。ここを省くと苦情による作業中断が発生し、結果的に工程が伸びます。
5. ④ 足場・養生の設置
着工日にまず行うのが仮設足場と防音防塵シートの設置です。木造で1日、RC造や中高層で2〜3日を見ます。前面道路が狭い、隣地との離隔がないといった条件では、足場の組み方に工夫が要り日数も延びます。道路に足場や仮囲いがはみ出す場合は所轄警察署の道路使用許可、道路占用が生じる場合は道路管理者の占用許可が必要で、これらも申請から許可まで日数がかかるため準備期間に組み込みます。散水設備の準備もこの段階です。
6. ⑤ 内装解体 → 躯体解体 → 基礎撤去
実作業は「手壊しで中を空にしてから、重機で外側を壊す」順序が基本です。まず建具・石膏ボード・断熱材・設備機器を手作業で撤去します(内装解体)。分別を先に済ませるほど後工程の廃棄物処理が安くなるため、ここを急いで混載にすると処分費で跳ね返ります。石綿含有建材が確認された場合は、レベルに応じた隔離養生・負圧除じん装置のもとで先行して除去します。内装が空になったら重機で躯体を解体し、続いて基礎・土間コンクリートを撤去します。木造30坪で概ね4〜7日、RC造は規模により2〜4週間程度が目安です。
7. ⑥ 地中障害物・整地・完了報告
基礎を撤去すると、古い浄化槽・井戸・以前の建物の基礎といった地中障害物が出てくることがあります。これは事前に確定できない典型的な変動要因なので、工程表には数日のバッファを見込んでおくと安全です。障害物がなければ整地・転圧を行い、1〜2日で完了します。最後に廃棄物のマニフェスト(産業廃棄物管理票)を整理し、建設リサイクル法の再資源化等完了報告を発注者へ書面で行います。建物滅失登記のために取毀証明書も併せて発行します。
8. 工程表に落とすときのポイント
解体工事の工程表は、法定手続きを独立した工程として明示するのが実務的です。「事前調査」「リサイクル法届出」「石綿調査結果報告」「特定建設作業届」「ライフライン停止」をそれぞれ1本のバーにし、解体着手日から7日以上前に終わるよう配置します。コウテイの解体工事テンプレートはこの並びで組んであり、開始日を入れれば届出期限を含めた工程が並びます。先行工程の設定を使えば、届出が解体着手より後ろに来てしまっている場合に矢印が赤く表示され、期限割れに気づけます。作成した工程表は共有リンクで発注者や産廃業者に渡せます。
❓ よくある質問
Q. 解体工事の届出は誰が出しますか。
建設リサイクル法に基づく分別解体等の届出(床面積80㎡以上)は、法律上の届出義務者が発注者です。実務では解体業者が書類を作成し発注者名で提出する形が一般的ですが、義務者が発注者である以上、誰がいつ出すかを契約時に明確にしておく必要があります。一方、騒音規制法・振動規制法の特定建設作業実施届は施工者が提出します。
Q. 解体工事の工期はどれくらい見ればよいですか。
木造30坪程度なら足場設置から整地まで概ね1〜2週間、RC造は規模と階数により2〜4週間以上が目安です。ただし着工前の事前調査・届出・ライフライン停止に3〜4週間かかるため、契約から完了までは1.5〜2ヶ月をみておくと安全です。前面道路が狭く重機やダンプが入りにくい現場、地中障害物が出た場合はさらに日数が加算されます。
Q. アスベストの事前調査はどんな建物でも必要ですか。
2021年4月以降、建築物の解体・改修工事は原則としてすべて事前調査の対象です。着工年が新しく石綿含有建材が使われていないことが図面等で明らかな場合でも、調査を行い記録を残す必要があります。加えて解体部分の床面積80㎡以上などの規模要件に該当すると、調査結果を労働基準監督署と自治体へ報告する義務が生じます。工程表では調査と報告を分けて置くと抜けにくくなります。
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