個人情報・セキュリティ対応
工程表には、施主の氏名や現場の住所、職人の携帯番号が当たり前のように並びます。クラウドで工程表を共有するなら、個人情報の扱いとセキュリティは避けて通れません。この記事では建設業の実務者向けに、工程表のどこが個人情報に当たるか、日本の個人情報保護法とGDPRのどちらをどこまで気にすべきか、共有リンクや印刷物をどう運用すれば安全かを、具体的な判断基準とあわせて整理します。
1. 工程表のどこまでが「個人情報」か
工程表そのものは工事の段取り表ですが、実務で使う一枚には意外なほど個人情報が混ざっています。代表的なのは施主の氏名、現場の住所、連絡先の電話番号、そして各工程に紐づく職人や協力会社担当者の名前と携帯番号です。氏名と住所が並べば特定の個人を識別できるため、個人情報保護法上の個人情報に当たります。まずは自社の工程表を一枚印刷し、赤ペンで「個人が特定できる欄」に丸を付けてみてください。多くの現場で施主名・現場住所・職人名の三つが残るはずです。ここを把握しないままクラウド化や共有を進めると、後から運用ルールを作り直すことになります。
2. 個人情報保護法が建設業者に求めること
個人情報保護法は取扱件数による適用除外が撤廃されており、一人親方や数名の工務店でも個人情報取扱事業者として扱われます。中心にあるのは安全管理措置で、組織的(責任者と手順を決める)・人的(従業者への教育)・物理的(書類と端末の保管)・技術的(アクセス制御と暗号化)の四つの側面から手当てします。クラウドサービスに顧客情報を預ける場合は委託先の監督も求められるため、保存場所・暗号化・解約時の削除条件を確認した記録を残しておくと説明が楽になります。漏えい等が起きた場合は個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要で、速報と確報で期限が異なります。詳細は委員会のガイドラインで最新版を確認してください。
3. GDPRは日本の建設業にどこまで関係するか
GDPR(EU一般データ保護規則)はEUの規則ですが、EU域内にいる個人へ商品・サービスを提供する場合や、その行動を監視する場合には、日本の事業者にも適用され得ます。裏を返せば、国内の施主と協力会社だけを相手にした住宅・リフォームの工程表に、GDPRが直接かかる場面はまずありません。関係し得るのは、EU企業が発注者の工場や研究所の案件、EU本社を持つ企業の日本拠点の工事、EU在住者が施主となる別荘案件といったケースです。なお日本はEUから十分性認定を受けており、日EU間の個人データ移転は一定の条件のもとで行いやすくなっています。案件単位で相手方にEU在住者が含まれるかを確認すれば足りることが大半です。

4. 通信の暗号化とデータの保存場所
セキュリティで最初に確認すべきは通信路と保存先です。コウテイは画面の表示から工程データの保存まで全通信をHTTPS(TLS)で暗号化し、証明書はLet's Encryptで自動更新しているため、期限切れで警告が出る事故を避けられます。保存先は日本国内のさくらインターネットのサーバーで、海外リージョンへの分散保管は行っていません。ログインパスワードはbcryptでハッシュ化して保存し、平文では保持しません。無料プランは工程表データがブラウザ内に保存される仕組みで、そもそもサーバーへ顧客情報が送られないため、社内で扱いを決めるまでは無料で試し、方針が固まってからクラウド保存に移る順序も取れます。
5. 共有リンクと印刷物の運用ルール
クラウド工程表で事故が起きやすいのは、URL共有と紙です。コウテイの共有リンクは推測できないランダムな文字列で発行され、任意でパスワードと有効期限(既定は90日、1〜365日の範囲で設定可)を付けられます。チャットに貼ると転送で閲覧範囲が広がるため、協力会社向けは工期プラス1〜2ヶ月、施主向けは引渡しまで、と期限を使い分けるのが現実的です。氏名を「A様邸」や苗字だけに置き換えれば、共有時のリスクはさらに下がります。A3横で印刷して現場に掲示する一枚も同じで、電話番号入りの工程表を仮囲いの外から見える場所に貼らない、竣工後は回収して処分する、の二点を社内ルールにしておくと安全です。
6. アクセス制御と退職・退会時のデータ
顧客データに触れられる人を限定し、抜けた人のアクセスを閉じることは、実務では暗号化より効きます。コウテイ側では顧客データへのアクセスを必要最小限のスタッフに限り、アクセスログを記録して定期的に確認します。利用者側では、Teamプランで最大10名までメンバーを管理できるため、退職や協力終了があった月のうちに外してください。ただし、すでに渡した共有リンクは設定した有効期限まで有効なままなので、最初から工期に見合った期限を切っておくことが実質的な防御になります。退会時は個人情報と工程表データが30日以内に削除される運用です。施主から開示や削除を求められた場合は、問い合わせ窓口から請求できる旨をプライバシーポリシーに明記しています。
❓ よくある質問
Q. 無料プランでも工程表データはサーバーに保存されますか?
無料プランの工程表データはお使いのブラウザ内に保存され、サーバーには送られません。ただし共有リンクを発行した時点で、その工程表は共有用にサーバーへ保存されます。社内の取扱いルールが固まるまで無料プランで試し、方針を決めてからクラウド保存の有料プランへ移る進め方も可能です。なおブラウザのデータを消すと工程表も消えるため、バックアップは別途お取りください。
Q. 日本の工務店やリフォーム業者もGDPR対応は必要ですか?
国内の施主・協力会社だけを相手にした工事であれば、GDPRが直接適用される場面はほとんどありません。EU域内にいる個人へサービスを提供する場合や、その行動を監視する場合に適用され得る規則だからです。EU企業が発注者の案件やEU在住者が施主の案件では確認が要りますが、多くの事業者にとっては、まず日本の個人情報保護法に沿った安全管理措置を整えることが先決です。
Q. 共有リンクを渡した相手が退職したら、リンクは止められますか?
共有リンクはURLを知っていれば閲覧できる仕組みで、個別に取り消す機能は用意していません。実務上は、発行時に有効期限(既定90日、1〜365日で設定可)とパスワードを設定しておき、期限切れで自然に閉じる形にするのが確実です。すでに配ったリンクを早く閉じたい場合は、その工程表自体を削除すると、紐づく共有リンクも無効になります。
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