工事を中止する雨・風・雪の基準|悪天候の定義と工種別の目安
「雨の日は工事を休む」と決めている現場は多いものの、法律で一律に「雨なら中止」と決まっているわけではありません。高さ2m以上の作業や、足場・クレーンを使う作業は、労働安全衛生規則などで「強風・大雨・大雪などの悪天候のため危険が予想されるときは作業を中止する」と定められ、その目安となる数値が通達で示されています。一方、塗装や防水は、安全ではなく品質の理由で、小雨でも施工しないのが一般的です。
このページでは、法令上の悪天候の定義、工種ごとの中止の目安、工程表への予備日の入れ方を、47都道府県の県庁所在地の平年値とあわせてまとめます。
悪天候の目安(労働安全衛生規則の解釈通達)
昭和46年4月15日 基発第309号による、労働安全衛生規則 第522条(高所作業の悪天候時の作業禁止)の「強風」「大雨」「大雪」の解釈です。足場やクレーンの規定でも、この目安が使われています。地震については、震度4以上(中震以上の地震)の後に、足場や掘削箇所の点検が求められます。
法令で作業の中止・点検が求められる場面
いずれも「悪天候のため危険が予想されるとき」に中止を求めるもので、何ミリ・何メートルで必ず止める、という形にはなっていません。上の目安を参考に、現場の状況で判断します。元請や現場によっては、これより低い数値で止める社内基準を設けていることもあります。
| 作業 | 定め | 内容 |
|---|---|---|
| 高さ2m以上の箇所での作業 | 労働安全衛生規則 第522条 | 強風・大雨・大雪等の悪天候のため危険が予想されるときは、労働者を作業に従事させてはならない。 |
| 足場の組立て・解体・変更 | 労働安全衛生規則 第564条 | 悪天候のため作業の実施について危険が予想されるときは、作業を中止する。 |
| 足場での作業の開始前 | 労働安全衛生規則 第567条 | 悪天候や中震以上の地震の後に足場で作業を行うときは、作業を始める前に足場を点検する。 |
| 明り掘削 | 労働安全衛生規則 第358条 | その日の作業開始前、大雨の後、中震以上の地震の後に、地山の浮石・き裂、湧水などの状態を点検する。 |
| クレーン・移動式クレーン | クレーン等安全規則 第31条の2・第74条の3 | 強風のため作業の実施について危険が予想されるときは、作業を中止する。 |
| クレーン(暴風の後) | クレーン等安全規則 第37条 | 屋外のクレーンは、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹いた後に作業するとき、各部を点検する。 |
| 鉄骨・木造建築物の組立て、コンクリート造の工作物の解体など | 労働安全衛生規則 | それぞれの作業について、悪天候のため危険が予想されるときは作業に従事させない旨が定められている。 |
工種別の中止の目安
安全のために止める作業と、品質のために止める作業があります。品質の理由で止める工種(塗装・防水・シーリング)は、小雨や雨上がりでも施工しないのが一般的です。
塗膜が乾かず、はがれや色むらの原因になります。公共建築工事標準仕様書でも、気温5℃以下・湿度85%以上などのときは原則として塗装を行わないとされています。雨上がりは、下地が乾くまで待ちます。
下地に水分が残ると、膨れやはがれの原因になります。ウレタン防水は1層ごとに乾燥が必要で、施工中に雨が降りそうな日は始めません。
接着不良の原因になります。雨の翌日も、目地の中まで乾いているかを確かめます。
屋根の上は滑りやすく、強風では屋根材やシートがあおられます。既存屋根を撤去した後は、雨の前にルーフィングまで終える段取りにします。
労働安全衛生規則 第564条で、悪天候で危険が予想されるときは中止と定められています。悪天候の後は点検してから使います。
吊り荷が振れ、クレーンの転倒や部材の落下につながります。クレーン等安全規則で、強風時は作業の中止が求められます。
雨水が混じると強度が落ちるため、雨の日の打設は原則として避けます。日平均気温がおおむね4℃以下の時期は寒中コンクリート、25℃を超える時期は暑中コンクリートとして、保温や打設時間の対策をとります。
地山が緩み、崩壊や湧水の危険が高まります。大雨の後は作業前に地山を点検します(労働安全衛生規則 第358条)。
強風では粉じんが飛び、養生シートがあおられます。散水で粉じんを抑えるため、強風の日は作業を見合わせることがあります。
47都道府県の県庁所在地:作業が止まりやすい日は年に何日あるか
気象庁の平年値(1991〜2020年の平均)から、1年のうち、雨が1mm・10mm以上降る日、強風(日最大風速10m/s以上)の日、積雪10cm以上の日が何日あるかをまとめました。塗装のように小雨で止まる工事は「1mm以上」、掘削やコンクリートのように強い雨で止まる工事は「10mm以上」の日数が目安になります。市名を選ぶと、月別の日数と工事ごとの工期の試算を見られます。
| 都道府県 | 県庁所在地 | 雨1mm以上 | 10mm以上 | 強風 | 積雪10cm以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 札幌市 | 143日 | 35日 | 47日 | 113日 |
| 青森県 | 青森市 | 162日 | 42日 | 65日 | 97日 |
| 岩手県 | 盛岡市 | 126日 | 39日 | 16日 | 46日 |
| 宮城県 | 仙台市 | 99日 | 36日 | 52日 | 4日 |
| 秋田県 | 秋田市 | 174日 | 57日 | 90日 | 42日 |
| 山形県 | 山形市 | 137日 | 36日 | 0日 | 57日 |
| 福島県 | 福島市 | 105日 | 36日 | 9日 | 12日 |
| 茨城県 | 水戸市 | 104日 | 42日 | 6日 | 1日 |
| 栃木県 | 宇都宮市 | 109日 | 47日 | 35日 | 1日 |
| 群馬県 | 前橋市 | 100日 | 38日 | 10日 | 2日 |
| 埼玉県 | さいたま市 | 100日 | 41日 | 8日 | 1日 |
| 千葉県 | 千葉市 | 104日 | 43日 | 70日 | 1日 |
| 東京都 | 千代田区 | 103日 | 45日 | 16日 | 1日 |
| 神奈川県 | 横浜市 | 105日 | 48日 | 32日 | 1日 |
| 新潟県 | 新潟市 | 172日 | 63日 | 41日 | 15日 |
| 富山県 | 富山市 | 178日 | 81日 | 27日 | 30日 |
| 石川県 | 金沢市 | 177日 | 79日 | 86日 | 14日 |
| 福井県 | 福井市 | 172日 | 78日 | 15日 | 25日 |
| 山梨県 | 甲府市 | 89日 | 36日 | 31日 | 2日 |
| 長野県 | 長野市 | 110日 | 32日 | 12日 | 24日 |
| 岐阜県 | 岐阜市 | 113日 | 54日 | 14日 | 2日 |
| 静岡県 | 静岡市 | 106日 | 57日 | 2日 | 0日 |
| 愛知県 | 名古屋市 | 103日 | 48日 | 20日 | 1日 |
| 三重県 | 津市 | 102日 | 46日 | 86日 | 0日 |
| 滋賀県 | 大津市 | 114日 | 49日 | 1日 | 0日 |
| 京都府 | 京都市 | 105日 | 46日 | 1日 | 0日 |
| 大阪府 | 大阪市 | 98日 | 42日 | 16日 | 0日 |
| 兵庫県 | 神戸市 | 93日 | 39日 | 39日 | 0日 |
| 奈良県 | 奈良市 | 106日 | 44日 | 1日 | 0日 |
| 和歌山県 | 和歌山市 | 97日 | 42日 | 51日 | 0日 |
| 鳥取県 | 鳥取市 | 158日 | 64日 | 28日 | 15日 |
| 島根県 | 松江市 | 149日 | 56日 | 67日 | 5日 |
| 岡山県 | 岡山市 | 88日 | 37日 | 39日 | 0日 |
| 広島県 | 広島市 | 94日 | 46日 | 36日 | 0日 |
| 山口県 | 山口市 | 115日 | 50日 | 4日 | 1日 |
| 徳島県 | 徳島市 | 98日 | 41日 | 21日 | 0日 |
| 香川県 | 高松市 | 96日 | 35日 | 11日 | 0日 |
| 愛媛県 | 松山市 | 100日 | 43日 | 1日 | 0日 |
| 高知県 | 高知市 | 112日 | 60日 | 1日 | 0日 |
| 福岡県 | 福岡市 | 112日 | 47日 | 13日 | 0日 |
| 佐賀県 | 佐賀市 | 106日 | 51日 | 38日 | 0日 |
| 長崎県 | 長崎市 | 111日 | 50日 | 11日 | 0日 |
| 熊本県 | 熊本市 | 110日 | 53日 | 6日 | 0日 |
| 大分県 | 大分市 | 98日 | 45日 | 4日 | 0日 |
| 宮崎県 | 宮崎市 | 117日 | 63日 | 25日 | 0日 |
| 鹿児島県 | 鹿児島市 | 121日 | 61日 | 23日 | 0日 |
| 沖縄県 | 那覇市 | 124日 | 52日 | 94日 | 0日 |
出典: 気象庁「過去の気象データ・平年値」(1991〜2020年)をコウテイが市区町村ごとに整理・加工。「—」はその観測所で観測していない要素です。雨の日数は雪の日を含みます。市区町村ごとの観測所と、近くの観測所から借りた要素は各市のページに記載しています。
コウテイの工期の試算で「止まる日」とした条件
工事と天候の各ページでは、全国の市区町村について「何月に着工すると何日かかるか」を試算しています。平年値は日単位で集計されているため、法令の「1回の降雨量50mm」はそのまま使えません。そこで、工程の種類ごとに、次の日を作業が止まる日として数えています。
| 工程の種類 | 止まる日 |
|---|---|
| 塗装・防水・シーリング | 1mm以上の雨・積雪・低温(月平均の最高気温が5℃未満の月は休み) |
| 外壁・下地・洗浄 | 1mm以上の雨・積雪 |
| 屋根 | 1mm以上の雨・強風・積雪 |
| 建方・上棟(木造) | 1mm以上の雨・強風・積雪 |
| 鉄骨建方 | 10mm以上の雨・強風・積雪 |
| 足場の組立・解体 | 強風・30mm以上の大雨・積雪 |
| 掘削・外構 | 10mm以上の雨・積雪 |
| コンクリート | 10mm以上の雨・積雪 |
| 解体(重機) | 30mm以上の大雨・強風・積雪 |
強風は日最大風速(10分間平均風速の1日の最大)が10m/s以上の日。積雪10cm以上の日が月の半分を超える月は、外の工事を止める(冬季休工)前提で計算しています。
工程表に雨天の予備日を入れる手順
- 1
雨で止まる工程を見分ける — 外部の足場・屋根・外壁・塗装・防水・掘削・コンクリートなど、天候で止まる工程に印を付けます。内装や設備の工程は、雨でも進められます。
- 2
その地域・その月に止まる日数を見積もる — 同じ6月でも、地域によって雨の日数は大きく違います。市区町村ごとの月別の日数を見て、止まりやすい工程の期間に何日止まりそうかを見積もります。
- 3
止まりやすい工程の後ろに予備日を置く — 工期の最後にまとめて置くより、雨で止まる工程の直後に置くと、後ろの職種の手配を組み直しやすくなります。最後にまとめる場合も、どの工程の分の予備かを書いておきます。
- 4
雨の日に進める作業を決めておく — 雨の日は外部の作業を止め、配線・配管・ボードなどの内部の作業に入れ替えます。入れ替える作業を週間工程表の備考に書いておくと、当日の朝に迷いません。
- 5
施主・発注者と延長の扱いを確かめておく — 多くの工事請負契約約款では、天候の不良など受注者の責めに帰さない理由で工期内に完成できないときは、工期の延長を求められると定めています。予備日の考え方と、延びたときの連絡の仕方を着工前に共有しておきます。
工事ごとの「向く時期」と天候で延びる日数
よくある質問
Q. 風速何メートルで工事は中止になりますか?
労働安全衛生規則の解釈通達では、「強風」を10分間の平均風速が毎秒10m以上の風としています。高さ2m以上の作業、足場の組立て・解体、クレーン作業などは、強風で危険が予想されるときに中止が求められます。天気予報の風速は10分間の平均風速なので、予報で10m/s前後なら、高所の作業は止める前提で段取りを組むのが安全です。
Q. 雨量何ミリで工事は中止になりますか?
法令の目安となる「大雨」は、1回の降雨量が50mm以上の降雨です。ただし、これは高所作業などの安全の目安で、塗装・防水・シーリングのように品質の理由で止める工事は、1mm程度の小雨でも施工しないのが一般的です。工種によって止める雨の強さが違います。
Q. 小雨なら外壁塗装はできますか?
小雨でも、雨が当たる面の塗装はしないのが一般的です。塗膜が乾かずに流れたり、はがれや色むらの原因になったりします。雨上がりも、外壁が乾くまで待ちます。湿度85%以上や気温5℃以下のときも、原則として塗装を行いません。
Q. 雨が止んだら、すぐに作業を再開できますか?
工種によって違います。塗装・防水・シーリングは下地が乾くまで待ちます。足場は、強風・大雨・大雪などの悪天候の後は、作業を始める前に点検が必要です(労働安全衛生規則 第567条)。掘削も、大雨の後は地山の点検をしてから再開します。
Q. 雨で工期が延びた場合はどうなりますか?
多くの工事請負契約約款では、天候の不良など受注者の責めに帰さない理由で工期内に完成できないとき、受注者は工期の延長を求められると定めています。実際の扱いは契約書によるため、着工前に予備日の考え方と、延びたときの連絡方法を施主・発注者と確かめておくと、トラブルを防げます。
このページは、法令・通達・公共建築工事標準仕様書などで一般に示されている内容をもとに、工程表を組むときの目安としてまとめたものです。個々の現場での作業の可否は、作業手順書・施工計画書・材料メーカーの仕様に従い、作業責任者が判断してください。


